人生80年時代の生涯生活設計(22)〜「生きる宝」 人間国宝の技と情熱の源〜 |
「生涯現役 耀き増す至芸−中村富十郎さん・竹本住大夫さん・茂山千作さん」 (2007年11月17日付読売新聞13版1面) |
2007年11月17日から連載がスタートした読売新聞の特集「生きる宝」をお読みになった方は多いと思います。この特集は、「生きる宝」である人間国宝の技と情熱の源を探るものです。生涯現役を目指して、年齢を重ねても芸の創造、継承には終わりはないと、それぞれの世界を牽引する責任ある姿を紹介しています。
私は定年後の第二の人生を自己実現の時代と捉え、CGBSホームページの「CGBSのレポート一覧」で、「人生80年代の生涯生活設計」をテーマに、現役時代のできるだけ早いうちから定年後の自己実現(自分らしく生きがいを持って毎日を過ごす)のための取り組みを提唱してきました。これは、定年で心身ともに引退してしまうのではなく、定年前にはやりたくてもできなかったことも含めて自分らしい生きがいをもって毎日を過ごす生涯現役を目指しましょうという提案です。
このレポート作成のため、日々読売新聞やホームページなどであれこれ情報を探したり、所謂団塊世代の皆さんの意見を伺ったりしています。今回は前述の特集「生きる宝」が目に留まりました。
この特集のうち、2007年11月17日付けの「生きる宝」(上)「生涯現役 輝き増す至芸」と題する記事に紹介されていた重要無形文化財保持者(人間国宝)の3名の方々、歌舞伎俳優の中村富十郎さん(78歳)、文楽の竹本住大夫さん(83歳)、そして狂言師の茂山千作さん(87歳)が生涯現役を目指して、それぞれの世界を牽引する責任ある姿を新聞記事より部分引用でご紹介します。生涯現役を目指す皆さんの参考になれば望外の喜びです。
◇ 歌舞伎俳優の中村富十郎さん(78歳)
(前略)第一線で活躍する富十郎さんにとり、鷹之資君の成長は大きな励みだ。「若いエネルギーに押される」と話す通り、今年も舞台にたった日数が150日を超えた。4月は、ひざの痛みを抱えながら、昼夜の公演を25日間休みなく勤めている。
「70歳で生まれた子に対する責任がある。先輩方から教わった芸を大事に伝えていかないと。ゆっくりしては、いられません。」
息子が成人する時には名前を譲りたいと話したこともあったが、今は「僕もまだ元気だろうし、早いんじゃないか」と豪快に笑う。
◇ 文楽の竹本住大夫さん(83歳)
(前略)大学卒業後、浄瑠璃語りの父の反対を押し切り、別の師匠に入門した。「声が悪い、覚えが悪い、おまけに不器用」。弱点をバネに修行を重ねた。罵倒する師匠に「もういっぺん」と食い下がった。父と同じ道を選んだ意地が支えた。実力主義の文楽で初めて親子2代の人間国宝に選ばれた。
(中略)「客が入らなければ芸は途絶える。元気なうちに、すそ野を広げなくては」
◇ 狂言師の茂山千作さん(87歳)
(前略)戦後も学校公演でしのいだが、再び狂言をできる自由を享受した。新劇やドラマにも挑戦し、ファンを開拓。狂言ブームの土台を作った。
「型を伝えることは大切だが、狂言師は博物館の動く人形ではない。現代の観客に楽しんでもらいたい」
(中略)「狂言の面白さを知ってもらい、芸を磨くためには何でもやってみたい」。チャレンジ精神は生涯変わらない。
人間国宝とは正しく「生きる宝」ですが、今回ご紹介した3名の方々の情熱の源は、年齢を感じさせない旺盛なチャレンジ精神ではないでしょうか。
もちろん人間国宝は特別な才能に恵まれた方ですが、私たちも老いを感じさせずに自分らしく前向きに第二の人生に取り組むことは十分に可能です。その推進エネルギーはやはりチャレンジ精神にあると思います。自分の人生に一番いい結果を出す生き方を考え、自己の可能性を追求して元気に生きたいものです。