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  定年後の計画を考えるのは定年2、3年前からでは遅すぎる
人生80年時代の生涯生活設計(13)〜定年後の生き方を計画するには定年2、3年前からでは遅い〜
定年後の自己実現の方法や方向性を計画するには定年2、3年前からでは遅い
2007年に60歳となる団塊世代のサラリーマンにアンケート調査した「退職後のリアルライフII」(電通シニアプロジェクト)によれば、現在定年を迎えていない人で、60歳定年後の仕事や暮らし方を決めている人は57.8%です。定年を迎える前年であっても、4割の人はまだ仕事や暮らし方を検討中です。
定年前に十分な準備をして、豊かで生きがいのある生活をおくる為の生涯生活設計(ライフ・マネジメントプラン)の必要性は認識されていても、このように定年後の生活は、その直前まで具体的に計画するのが困難なようです。

このように定年後の生活を具体的に計画することが難しいのはなぜでしょうか。リクルートワークス研究所 SPECIAL THEME 「人を活かす高年齢期就業へのヒント 2006年10月(1)」から、キャリアステージ研究所代表の堀越弘氏の提言をご紹介します。

「40代から50代前半までは仕事に忙殺され、定年後のことまで真剣に考えている人はあまりいないように見受けられます。キャリア研修を行うと、本当はいろいろなことに関心があるのに、現実は仕事の比重が極端に高く、家庭や地域、余暇などにおける役割が少ない。
それが57〜58歳ぐらいになると、定年後どんなふうに生きるかが急に気になり始め、『今後はどうなるんでしょうか』とこちらに質問される方もおります。
しかし、定年2、3年前から60歳以降の生活の方向性を考え始めるのでは、やはり遅いと思います。自分としてどうしていきたいのか、方向性についての考えを深めていくには10年くらいの時間が必要です。」

堀越氏の指摘のように、定年が近づくまで、眼前の仕事に追いまくられて定年後の生活に意識を向ける余裕がないことに加えて、仮に定年を意識して早めに計画を立てることができたとしても、定年前の予想もしない環境変化や出来事・経験によって、計画を変えざるを得ないことも現実には起こり得ます。

この事例を、リクルートワークス研究所 SPECIAL THEME 「人を活かす高年齢期就業へのヒント 2006年10月(1)」から原文のままご紹介します。



大手メーカーで働き、この8月で60歳定年を迎えた林幸男氏のケースはその好例だ。
職業に関する研究業績の多い心理学者、D.E.スーパーは著作のなかで、人が仕事を選ぶ理由は大きく分けると3つであると述べている。「生計を支えていけるか」、「好きな仕事内容か」、「そこでの人間関係に満足できるか」の3点だ。
通常、高年齢期になればこの3点は安定しあまり変化しないものとみなされていないだろうか。だが林氏のケースは、変化が起こり得ることを物語る。

「雇用延長はしないと決めました。」

大手メーカーで働き、この8月で60歳定年を迎えた林氏は、もともとは「60歳定年後も、継続雇用を希望してこの会社に勤め続けたい。この会社で職業人生を終わりたい」と考えていたという。
それが、「雇用延長はしません。この会社に未練はありません」と語るに至った。きっかけは2年前の出来事だ。

「以前の上司は転籍の相談がきても、断ってくれていました。私に任せている仕事があるから転籍はさせられない、と。その後、上司が変わると、新しい上司は転籍の相談をそのまま私にもってきました。『転籍の話がきたんだけど、どうだ』と。

今の仕事の状況はどうかと私に尋ねたり相談したりするのではなく、選択肢をそのままもってきたんです。私の仕事ぶりを全然見ようとしなかった、見てくれなかったんですね。転籍先のグループ会社の社長とはそのとき一緒に仕事をしていたので、その社長が『ぜひ』と言ってくれていたことは、以前から知っていました。

私は、人とのつながりで認めてくれるなかで仕事をしたいと思ってるんです。だから、出向経験期間を経て何も言わずに退職、そのグループ会社へ転籍しました」

新しい仕事に挑戦したい

大手メーカーの技術職として30年強の経験を積んだあと、5年前にひょんなことから人事・カウンセリングの仕事に就き、転籍先でもその仕事は広がり、現在はさらにキャリアに関する仕事にも取り組み、新たなことを吸収・実践する面白さ、自分が変化する嬉しさを感じている。

「20代、30代は設計の仕事に携わった。終電で帰り、朝8時には出社、土曜日も出社が当たり前でした。そのなかで、きっちり、自分の思うとおりの製品を作るのが好きでした。白か黒かはっきりさせる、自分の価値観で決めてきた30年間です。それが、今はグレーが好きなんです。

今、就職活動を始めているんですが、『技術系の経験を活かすのであれば求人はあるんですけど』と言われるのを断っているんです。新しい人事やキャリアの仕事をしたいんですよね。でも、残念ながら、その仕事では経験が足りないこともわかっているんですが。」

さらに、フルタイムの仕事をする必要も出てきたという。「子どもが大学に入りなおしたんです。以前は、定年後は週に2、3日働くくらいがよいと思ったり、好きなサーフィンで毎年行っていたハワイで暮らそうかと妻と相談したりしていたんですが」と笑う。

スーパーのいう仕事を選ぶ3つの理由が、林氏の場合、定年前に大きく変化していることが見て取れる。
定年前には予想していなかったフルタイム勤務が必要になり、同時にキャリアカウンセリングという、新たに挑戦してみたい仕事分野が見え始めた。さらに、定年退職を決めるきっかけとなる人間関係の変化もあった。

その結果、「この会社で職業人生を終わりたい」から「もう未練はない」へ思いの変化が50代後半で起こり、職業生活の変更に至ったのだ。

林氏に起こったような変化は、その時にならなければなかなか予測できないだろう。



このような定年後の計画の難しさや、定年前に予測できないさまざまな変化が起こるという現実に対応していくためには、何が重要となるのでしょうか。
次回はキャリアステージ研究所代表の堀越弘氏の「キャリア環境変化対応性」という行動特性についてご紹介します。

※引用出典
2006年10月11日掲載
リクルートワークス研究所 SPECIAL THEME 「人を活かす高年齢期就業へのヒント 2006年10月」


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